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受賞者インタビュー① 西川 泰弘さん

第一回アートパラ深川大賞 作者 西川 泰弘さんインタビュー

万全の体制の中はじまった、第2回アートパラ深川2021。ここまですでにたくさんの方々にご来場いただき、本当にありがとうございます。
今年、初回になかった諸々の取り組みも増えたアートパラですが、昨年大賞受賞の西川泰弘(工房集・埼玉県)さんは清澄庭園大正記念館にて華道家・假屋崎省吾さんとコラボレーションを展開し、深川ワイナリーのワインラベルに作品が採用され、木場のEARTH+GALLERYに大作『ラスト』をご出展と八面六臂のご活躍。アートパラでは、一度見れば心に残る、印象的なタッチの背景にある想い、そもそもは問題を起こして施設を転々とされていた中で出会った工房集、そうして始めた作品制作と、「アーティスト・西川泰弘」誕生秘話とも言えるインタビューを敢行しました。
31日(日)まで開催、折り返し地点のアートパラ。インタビューをお読みになれば、さらに楽しめるようになること請け合いです。お会いできますこと、楽しみにしています。

 

10/11/2021 工房集 川口太陽の家

西川 話するのは、好きです。

ー同時に「絵を描く行為」というのは、言葉にならないことをかたちに表すことでもあります。

西川 それは表現だから楽しいです。

ーもともと表現することはお好きだったんですか?

西川 好きでした。

何かをつくるとか、作業をするということは、もともと苦手でした。

でも、自分の思っていることを活字にしたり、身体で表現することは好きで、絵も、自分の思った通りに描くことができるようになって、好きになりました。素直に表現することは一番楽しいことだし、それが仕事になったら楽しいと思っています。

ーご自分で描きたい絵は、最初から描けたんでしょうか?

西川 一時的に描けなくなった時はあったけど、スタッフと話すことで自分の描くイメージが復活できて、今は自分の想いを自由に表現できています。

ー一番最初はどうでしたか?その時から描きたいものは描けたのですか。

西川 はい。

ーそれは、普通だれもが苦労する部分で、すごいことだと思います。

西川 遊び感覚で、絵の具で色を混ぜたりとか、きれいに塗るのは好きだから、何も悩むことはありませんでした。

ー何を描いているんですか?

西川 「花」だったり「模様」だったり、最近では「スターライト」のようなモチーフとか、2色の絵や、シルクスクリーンのように下の絵を透かして見せるような表現だったり、立体的で奥行きのある絵を描いたりしています。

ーそれは頭にイメージがあるんですか?

西川 僕自身、練りに練って描いています。

ー違うテーマでも、どの絵にも西川「節」と呼べるものがあるように感じます。

西川 あれはイルミネーションで、「こんな感じの絵を描いてみたい」と思ったんです。点々はライトの光で、点々点々を描くことは、単純作業ですが、自分自身としてあれを描くことでリラックスというか、落ち着く気がするんです。また逆に、元気が出たりします。

ー以前のインタビューで「絵を描くことで救われた」というお言葉もあります。

西川 自分はどうしようもなくて、「生きてる資格がない」と思っていたのが、そういう自分でも絵を描くことで、取材されたり、絵がワインのラベルになったり、「こんな僕でも認めてもらえるんだ」、「こんないいことって起きるんだ」ということを知って、「頑張ろう」と思えたんです。

それは一歩後退、一歩前進みたいな感覚で、そういう中で救われたんです。

ー「生きる資格はない」と思ってらしたんですか?

西川 はい。

ー誰も、そんなことはないと思います。

西川 自分の気持ちがいっぱいになってしまって「また、やってしまった」って。

自分が苦しくなっちゃって、それで人に迷惑をかけてしまうことで、その繰り返しが多くて、人に嫌われたりとか、精神病院に入って暴行を受けて袋叩きにあったり、閉じ込められたり、苦しい想いがずっとありました。

そうして自分のことが見えてきて、「こんな僕が生きてていいのかな」とか、「何のために僕はいるんだろう」みたいに悩んで、お母さんお父さんともケンカして泣かして、僕自身も泣いて。

ここに来てからも、リストカットをした時にすごく怒られたことがあって。それで、「頑張らないといけないのかな」「こんな僕も生きていかないといけないのかな」と思ったんです。

ー絵はいくつの時に描き始めたんですか?

西川 小学生の時ですね。でもそれは、「顔を描きなさい」みたいな感じだったので、あまり上手くできませんでした。

ー今、おいくつですか?

西川 61です。

ー小学生から61歳になる間で「あ、これは僕の自分の絵だ」と思えた瞬間があったと思うんです。それはいつ頃でしたか?

西川 ここに来てからです。

ーなるほど。それは、何が今までと違ったんでしょう?

西川 「型にはめない」というか、自分の想いを素直に表現するということができるようになったんです。

ー工房集がそれをさせてくれた?

西川 そうです。その時にイルミネーションが好きだから、今の絵になりました。

ー今まで、ご自身の作品をいろいろなところに出してきて、たくさんの反響があるかと思います。

西川 嬉しい感想としては「すごいですね」、「好きです」、「ファンです」ということを言われます。

嫌な感想はなくて、みんなが褒めてくれるから、絵を描くことで認められるというのは「こういうことなのかな」って思っています。

ー西川さんの言う「イルミネーション」は、それぞれ皆さんには、別のものに見えているような気がします。

西川 平井さんは何を感じますか?

ー私が何に見えたか、、それはベタですが「生命」というか、細胞に見えました。人間の身体をつくっている細胞が、一つ一つ動いているような感覚がありました。

それは正しい見えた方でしょうか?正直、イルミネーションには見えていませんでした。

西川 でもそういう感想を言っていただけて、ありがたいです。そういう風に見てくれることに、感謝します。

ー深川には大きな、みんなが胸を張れるお祭りがあります。住んでいる方々がそれぞれバラバラな性格なのに、皆さんが一緒になって一つのことをつくりあげる、そういうことが得意なエリアなんだと思います。その感覚と、細かい手作業の繰り返しが大きな、きれいな作品になる西川さんの仰っていることと、重なる気がしました。

西川 何でも思ってくれていいと思います。

ーご自分以外で、ピンとくるアーティストや作品はありますか?

西川 「みんな頑張ってるな」「みんな、絵が好きだから描いているんだな。仲間だな」って思います。みんなが、「友だちなんだな」って思います。

ー今、イルミネーション以外に描きたいものはありますか?

西川 描きたいものは特になくて、とにかく描いていれば、いいことがいっぱいあると思って、描き続けることに希望を持っています。

一時描けなくなったこともあったけど、それも乗り越えました。

ー「描けない」のはどういう時なんですか?

西川 ネタがなかった時です。自分のパターンがマンネリ化して、魅力がなくなった時があったんです。ボヤけちゃって、ただ描いているだけとか、もうやめちゃってもよかったんだけど、スタッフが「いろいろなモチーフを使って描きなさい」と言ってきて。

それで、いろいろな工夫をして描いて、新しい自分の表現を見つけられたことがまた嬉しくて。

ーその時も、この場所のサポートがあったんですね。

西川 はい。ここはすごく素晴らしいところです。

ー昨年NHKの取材で、「大賞を受賞して僕の生活は変わるのかな」と仰っていました。実際には、どうでしたか?

西川 「これからいろいろなことが起きるんじゃないか」という、ワクワク感があります。僕の作品がもっと評価されたり、たくさんの場所で展示されることが楽しみです。

ー受賞作品は「春」でした。作品はシリーズで、春夏秋冬全部あるのですか?

西川 ないんです。春一つだけです。

他に、「ラスト」というのがあります。あれは結構迫力があるんです。

ー作品を見た人に何を感じて欲しいですか。絵が社会にできることって、何だと思いますか?

西川 何かを伝えるというより、僕の絵を見た人たち、いろいろな人たちと友だちになれたらいいなと思っています。

それが芸能人でも、アナウンサーでも、有名人でも誰でもいいから、僕は寂しがり屋で友だちがいないから。

ーそう考えると、今のご活躍は、願い通りの状況ではないですか?

西川 はい。

ー今後の希望は、何かありますか?

西川 続けて行って、個展をいっぱいやりたいです。

ー西川さんはダンスも踊られますよね?

西川 創作ダンスを踊ります。アートパラに関わられている有名人の方たちにも、見に来て欲しいです。ダンスも、有りのままの自分を見せて、自分の存在を知ってもらう表現なんです。

(文責:平井有太)

 

【特別企画】三井不動産 アート X ∞(無限大〕プロジェクト 假屋崎省吾さんとのコラボレーションについて

 

 

※西川さんの昨年の大賞受賞作品は、清澄庭園・大正記念館にて假屋崎さんとのコラボ作品として見ることができます。また、さらなる大作「ラスト」は、アースプラスギャラリーに展示中です。見逃さぬよう!

清澄庭園・大正記念館   東京都江東区清澄3丁目3−9
アースプラスギャラリー  東京都江東区木場3丁目18−17

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